生物学類4年 鈴木 美慧
車窓から見える街の様子が今までとは様子が違って来た。朝9時に大学をでて宮城県石巻市に到着したときにはすでに秋の日は陰っていたが、私の目に飛び込んで来た市内の風景は鮮明に焼き付いた。一階部分が空洞化した建物が並び、街の一部には積み上げられた車やがれきの山。横になぎ倒された防砂林の松。これが同じ日本であるということがにわかには信じがたかった。
3月11日の震災以降、私の出身地の東北があらゆる場面で注目を受け、自分の無力さに何度悔しい思いをしたかわからない。アクションを起こそうとしても「どうしたらいいのか、何をしたらいいのか。」その方法が思いつかなかった。サイエンスコミュニケーションを通して被災地でボランティア活動をするという話が舞い込んだとき、この活動が私のこの行き場のない気持ちを納めてくれるかもしれないと参加を決めた。実際に自分の直感に従って体を動かす時期に来ていた。
ボランティア活動の出発点は「誰が何を必要としているか。」を知ることにある。一度その現場に訪れないと分からないことがたくさんあった。自分たちがやりたい理想と私たちに求められている現実には大きな隔たりがあること。サイエンスコミュニケーショングループが被災地で活躍できるとしたら、それは復旧段階ではなく復興段階。コミュニケーションそのものに焦点を当てた活動を提供することが求められた。サイエンスを学ぶことを目的とするのではなく、科学実験を通して、被災地の人間と非被災地の人間との間に絆が生まれるのだ。
SCOUTの活動を通して女川の子どもたちに会えたことで、私には言葉にできない「責任」を抱くようになった。被災地に住む子どもたちだけではなく、現代に生きる子どもたちが描く未来はどんなものだろうか。その未来に希望を持てるようになるだろうか。私たちはサイエンスコミュニケーションを通して、子どもたちに科学の「おもしろさ」を見いだすきっかけを提供することしかできないが、この小さなきっかけが、いつか芽を出し、彼らの将来に復興の花を咲かせることができるようになるかもしれない。サイエンスコミュニケーションを通した活動には、「科学を知るきっかけ作り」という使命と、「もっと知りたい」と思わせるような科学実験の提供という使命があると感じた。
今回の経験を手記に納めるまで時間がかかった。私が肌で感じたことを整理し、より多くの方に伝えると難しさと責任を改めて感じた。そして同時に今後も、サイエンスコミュニケーションの活動を通して、被災地の子どもたちと継続的な交流をしていきたい。
一つのアクションを起こすことで、次のアクションが生まれる。始めにアクションを起こそうと動いてくださった先生方、一緒に動いてくれたメンバーに感謝してこの手記を終える。

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